暗号資産の仕組み(ビットコイン編)

Ledefiリサーチ事業部
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目次

  1. はじめに
  2. 取引にブロックチェーンを利用
  3. Proof of Workを採用
  4. 発行枚数に上限を設定
  5. おわりに

1. はじめに

本レポートではビットコインの仕組みについて説明する。
まず最初に、ビットコインとは世界で初めて誕生した暗号資産で、サトシ・ナカモトと名乗る匿名の人物またはグループが「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」[1] というホワイトペーパーを2008年10月末にインターネット上で発表した。その後、この論文に賛同した複数の開発者がサトシ・ナカモトに協力し、ビットコインを用いた取引が開始された。

このビットコインで提唱された理論や技術を元に、現在では様々な暗号資産が開発されているが、それは今後のレポートで紹介するとして、今回は投資・投機目的で扱われることが多くなったビットコインの仕組みをわかりやすく解説する。

2. 取引にブロックチェーンを利用

ビットコインは、ブロックチェーンという仕組みを用いて取引の記録を管理している。ブロックチェーンは、情報を記録するデータベース技術の一種であるが、同じデータを複数の場所に分散して管理する。それにより、仮に一箇所が誰かしらの攻撃によって改ざんされても、大多数の参加者が取引履歴のコピーを保持しているため、偽造や改ざんが極めて困難、という特徴を持っている。ブロックチェーンを利用することにより、ビットコインは国家や金融機関といった中央管理者が存在しないにも関わらず、信頼性を維持することができている。

3. Proof of Workを採用

Proof of Work(PoW)とは、ビットコインをはじめとした暗号資産の取引を正しくブロックチェーン上に記録していくための仕組みである。(PoWのような仕組みをコンセンサスアルゴリズムと呼び、他にもいくつかの種類が存在する。)

ブロックチェーン上では、ある取引が発生した際に、第三者に承認されることで初めてその取引が記録される。PoWを採用しているビットコインは、ブロックチェーンにデータを記録するのに適した”nonce”と呼ばれるパラメータの値が算出されることで承認作業が行われるのであるが、この計算のことを「マイニング(採掘)」と呼び、それに協力する人々のことを「マイナー(採掘者)」と呼ぶ。

このマイナー達の中で最も早く”nonce”を算出した人がデータを記録する権利を与えられる。
マイニングに成功した人は報酬としてビットコインを得ることができるため、マイナー達はそれを目的にマイニングを行っている。

マイナーへの報酬をビットコインで支払う事がセキュリティ面でも役割を果たしている。というのも、マイナーが高い演算処理能力を保有していれば、取引履歴の改ざんなど不正を行うことは可能であるが、不正を行うことでビットコインの価値が暴落するとマイナー自身が損失を被るため、不正を行うインセンティブが働くことはない、という上手い仕組みになっている。

一方で、そんな上手い仕組みを採用しているPoWにもデメリットが存在する。ここでは主なデメリットを2つ紹介する。

  1. 消費電力問題
    近年ではマイナーの競争が激化し、マシンを何百台も繋いでマイニングを行う組織も出てきて消費電力量が非常に大きくなっており、これが環境問題につながるのではないかと懸念されている。

  2. 結果的に中央集権化する可能性がある
    マイニングには大量の電力とCPUが必要で、個人が大規模なマイニングを行う組織に立ち向かうことはほぼ不可能である。その結果巨大資本をもつ組織だけがマイナーになってしまうと結果的に中央集権化してしまうリスクがある。

4. 発行枚数に上限を設定

ビットコインはドルや円とは異なり、発行枚数を2,100万枚に制限している。それにより、通貨の希少性を担保し、価値の急激な低下を防いでいる。

法定通貨の場合は、FRB(連邦準備理事会)や日本銀行などの中央管理者が、経済状況に合わせて法定通貨の発行量を調節することで価値を維持している。一方で、ビットコインは中央管理者が不在のため、流通量を調節する仕組みがなく、過剰に発行するとビットコインの価値が下がりインフレを引き起こす可能性がある。こうしたインフレを防止するために発行上限が定められている。

では、どのように発行枚数を制限しているのかと言うと、半減期という仕組みを採用し、4年に1度の頻度でマイナーが報酬として受け取るビットコインの額を半減させている。(すなわち、ビットコインの新規発行ペースが半分になるということである。)

また、執筆時点(2022年12月末)の時点で既に約90%のビットコインが採掘済みとなっていて、2140年頃には上限に達すると考えられている(図1参照)[2]

図1. Bitcoin採掘スケジュール 出所:RIVER FINANCIAL "Who Creates New Bitcoin?"を基にNext Finance Tech作成

5. おわりに

今回はビットコインの仕組みを解説した。ビットコインはブロックチェーンや発行のメカニズムを調整することで通貨としての価値を創出している。ビットコインは最初に生み出された暗号資産で、全ての暗号資産の中で最も高い時価総額を保ち続けている。そのため、今後の暗号資産の発展にビットコインは欠かせない存在であるといえるであろう。

参考文献

[1]:Satoshi Nakamoto. “Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System”. https://bitcoin.org/bitcoin.pdf. (2023/07/07)
[2]:RIVER FINANCIAL . “Who Creates New Bitcoin?” . https://river.com/learn/who-creates-new-bitcoin/.