A Vault First Roadmap - Catalysing Bitcoin DeFi:Vault優先のロードマップ ― Bitcoin DeFiの加速 [日本語版]
本稿は、A Vault First Roadmap - Catalysing Bitcoin DeFiの日本語翻訳記事である。
「Bitcoinステーキングプロトコル」は、世界初のトラストレスなBitcoinにユースケースを出したプロトコルである。この仕組みにより、ネイティブなBitcoin(=ブリッジやラップを伴わない本来のBTC)を他のネットワークのプルーフ・オブ・ステーク(PoS)セキュリティの提供に用いて、トラストレスかつノンカストディアル型にステーキング報酬を得ることが可能になる。ローンチから14か月の間に、9万BTC(約100億ドル)以上がアクティベートされ、現在は5.7万BTC(約70億ドル)以上がステーキングされている。これらのステーカーには、個人投資家・大口保有者・機関投資家(含 CEX)が含まれる。
この規模は、CoinbaseのcbBTC(約6万BTC)に匹敵する。Bitcoin保有者は、ブリッジを利用するよりも、中央集権的な信用を必要としない「トラストレス・ステーキング」を選んでいる。ブリッジを使えば確かにより多くのDeFi利回り機会が得られる一方で、その分、中央集権化リスクを負う必要があるためである。
しかし、このトレードオフ(信用と利回りの両立問題)は、ついに終わりを迎えた。Babylonは新たに、「トラストレス・ビットコイン・ボールト・プロトコル(Trustless Bitcoin Vault Protocol)」 を発明した。
このプロトコルは、ネイティブBitcoinがどのチェーン上のDeFiプロトコルにも、トラストレス・非カストディ型で参加可能にする。これにより、Bitcoinの流動性は国境を超えてプログラム可能となり、DeFi全体にわたる活用が可能になる。代表的なユースケースには、Bitcoin担保型レンディング、Bitcoin担保型ステーブルコイン、そしてBitcoin担保型永久先物DEX(PERP DEX)などが挙げられる。さらに、このVaultプロトコルはトラストレスBitcoinステーキングプロトコルと連携して機能し、Bitcoinの生産性を一段と高める。
このプロトコルを支える中核技術革新は、Bitcoinが他のブロックチェーン上のスマートコントラクトの状態を、最小限のオンチェーンコストで検証できる点にある。これは、ガーブルドサーキット(garbled circuits)とゼロ知識証明(zero-knowledge proofs)という暗号技術によって実現されている。
このトラストレス・ビットコイン・ボールト・プロトコルは、まさにゲームチェンジャーと言えるであろう。
トラストレス・ビットコイン・ボールト:Bircoin DeFiの加速
トラストレス・ビットコイン・ボールトの登場により、Bitcoin保有者はついに、オンチェーンの金融市場へ安全にアクセスできるようになった。これらの市場は、オフチェーンのものと比べて、透明性が高く、柔軟で、資本効率にも優れている。たとえばBitcoin担保型レンディングを考えてみよう。従来のオフチェーン型では金利は6〜10%に達し、貸し手が借り手のBitcoinをカストディ(預かり管理)するのが一般的であった。一方、オンチェーンでは金利は4〜5%程度に抑えられ、さらにトラストレス・ビットコイン・ボールトを利用すれば、中央集権的な貸し手を介さずにトラストレスで貸付が可能になる。
機関投資家にとって、このプロトコルには2つの重要な特徴がある。1つ目は、ネイティブなBitcoinがブリッジによってラップド資産に変換されない点。2つ目は、異なるボールトに保管されたBitcoinが明確に分離(セグリゲート)されている点である。つまり、ブリッジやラッパー経由で複数のユーザーのBitcoinが一つにまとめられてしまうような「資産の混在」が起こらない。
Bitcoin保有者の本格的なDeFi参入は、DeFiプロダクト(レンディング、ステーブルコイン発行、パーペチュアルDEX、オプションDEXなど)、その参加者(発行者・マーケットメイカー・清算者・流動性提供者など)、そして基盤となるブロックチェーンに新たな活力をもたらす。
さらに、このプロトコルはインフラ事業者や金融サービス提供者にとっても大きな機会をもたらす。本プロトコルは高度な暗号技術を要するインフラの上に構築されており、カストディ事業者、デジタルバンク、APIプロバイダー、Bitcoin LST事業者、MEV対応の清算者など、専門的な運用能力を持つプロバイダーに最適である。また、金融サービス提供者は、自社のBitcoin顧客がDeFiへのエクスポージャーを得て収益を上げられるよう支援することも可能である。たとえば、金利裁定取引(アービトラージ)による収益化などが挙げられる。
マルチチェーン展開戦略
Babylonのトラストレス・ビットコイン・ボールト・プロトコルは、あらゆるブロックチェーン上で機能する。しかし、すべてはどこかから始めなければならない。
私たちが最も重視しているのは、Bitcoin保有者の安全性と利用体験である。そのため、まずは十分にテストされ、深い流動性と多機能性を備えた成熟DeFiプロトコルとの統合を優先し、主要なDeFiチェーン上でボールトを展開する。最初のステップはEthereumである。その後、十分なモメンタムを得た段階で、Babylon Genesisやその他のネットワークへ、トラストレス・ビットコイン・ボールトを順次展開していく。
このマルチチェーン戦略は、ChainlinkやTetherが採用してきた手法と非常に親和性がある。彼らは自らのチェーンにすべてのDeFiプロトコルを呼び込むのではなく、まず他のネットワーク上に自社のコアプロダクトを展開することで、圧倒的な採用と価値を生み出してきた。Chainlinkがあらゆるブロックチェーンに不可欠な価格オラクルを提供してきたように、Babylonはあらゆるブロックチェーンに不可欠なBitcoinを届けていく。
BABYトークンのユーティリティ最大化
マルチチェーン戦略によってプロダクトの採用拡大と価値創出の土台を確立した上で、BABYトークンのユーティリティをさらに高めるための多様なアプローチが考えられる。
まず、BABYトークンはボールトを展開する各チェーンへブリッジ可能であり、ボールト利用料の支払い、インフラプロバイダーのデポジット、ガバナンス投票などに使用できる。さらに、DeFi連携によって発生するネットワーク手数料(例:追加の金利やプレミアム手数料など)は、BABYの自動買戻しおよびバーン(焼却)に充てることも可能である。
また、BABYのユーティリティを一段と強化するために、DeFi連携向けのVEモデル(Vote Escrow Model)の導入や、BABY LST(Liquid Staking Token)の活用など、より高度なトークノミクス設計も検討している。私たちは今後もコミュニティと緊密に連携しながら、BABYのトークノミクスを進化させ、健全で持続的に成長するエコシステムの実現を目指していく。
ロードマップの更新
トラストレス・ビットコイン・ボールトをいち早く世界に届けるため、Babylonは来年初頭のメインネットローンチという積極的なスケジュールで開発を進めている。この大きな目標にエンジニアリングリソースを集中させるため、Bitcoin-supercharged Networks(BSN)およびBabylon Genesis上のEVMのローンチ時期を、トラストレス・ビットコイン・ボールトのリリース後に戦略的に再配置した。現在は、ボールトの開発に全力を注ぐことで、BSNやEVMが前例のない規模の流動性と採用モメンタムをもって始動できる基盤を整えている。
このロードマップ変更については、すべてのエコシステム・プロジェクトと既に協議済みであり、彼らの理解と協力に深く感謝している。実際、すでに複数のプロジェクトと連携し、トラストレス・ビットコイン・ボールトの共同開発を進めている。また、影響を受ける関係者と緊密に連携し、混乱の最小化に努めている。
付記:Babylonの信念
「トラストレスであること」こそが、BitcoinをDeFiの世界で活性化させる鍵であり、Babylonの理念の中核である。Babylonコミュニティの揺るぎない支援と、エコシステムパートナーとの緊密な協力により、トラストレス・ビットコイン・ステーキング・プロトコルはすでに100億ドル(約1.5兆円)規模のBitcoinを稼働させている。そして今、「トラストレス・ビットコイン・ボールト × ステーキング」の組み合わせによって、1,000億ドル規模のBitcoin活用を目指す。
この1,000億ドルという目標は壮大だが、十分に実現可能である。Babylonは、コミュニティ、ビルダー、そして機関投資家の皆さまとともに、Bitcoin DeFiの新たな時代を切り開いていくことを心から歓迎する。また、野心的なDeFi人材の採用も積極的に行っている。