crvUSD:パラメータ選択と清算リスクへの対応~オンチェーンデータから探るcrvUSDユーザーの動向~
目次
- はじめに
- WBTC-crvUSDマーケットにおけるユーザー特性
2.(1) WBTC預入額
2.(2) パラメータnについて
2.(3) healthについて
2.(4) Loant-to-Value 比率 - 清算リスクへの反応
3.(1) ソフト精算への対応
3.(2) ハード精算の発生 - おわりに
参考文献
Appendix 1. データ取得に利用したGraphQLクエリ
1. はじめに
2023年5月にローンチされたcrvUSDは、WBTCやETHなどのコインを担保にcrvUSDの発行を行うプロダクトである。プロダクトの仕組みや利用されているアルゴリズムの詳細は、弊社レポート『crvUSD:バンド構造とLLAMMAの仕組み』『crvUSD:CDPプロトコルの抱える清算リスクに対応したステーブルコイン』を参照されたい。
crvUSDは二段階の清算メカニズムにより従来のCDP(Collateralized Debt Position)と比較して担保が完全に失われるリスクを低減させているものの、実際の運用にあたっては担保の状況を適切にモニタリングし清算リスクが高まる場合には迅速に対応する必要がある。具体的には、担保となるコインの価格低下時に二種類の清算リスクに対処することとなる。一つ目はソフト清算のリスクであり、LLAMMAプールでの取引手数料が預け入れた担保から差し引かれることで損失が発生する。また、担保の拠出は本質的にLLAMMAプールへの流動性供給であることから、担保コインの価格が下落するとIL(Impermanent Loss)が発生する。ソフト清算が迫る状況ではある程度の損失を許容し担保コイン価格の再上昇を期待するか、あるいはローン返済によりソフト清算を回避するのか、判断を迫られることとなる。二つ目はハード清算のリスクで、担保として差し出したコインの価値が著しく低下すると、担保が売り払われる可能性がある。
本レポートではcrvUSD運用者の意思決定に役立つ情報を提供することを目的としてオンチェーンデータからcrvUSDユーザーが採用しているパラメータや健全性指標の分布、清算リスクに対する反応について整理した。2章ではWBTCを担保にcrvUSDを発行した利用者を対象に、彼らが採用しているパラメータや健全性の指標である「health」の分布を概観し、マーケットに存在するユーザーの動向を探った。3章では清算リスクに焦点を当て、WBTCの価格が大幅に下落した期間を対象としてソフト清算リスクに直面したユーザーの反応を分析した。また、過去のハード清算の履歴を整理し、ハード清算リスクに対する対応についても簡潔に触れている。
以降の分析にはConvexが提供するThe Graph(Subgraph) のデータを使用した。データ取得に利用したサンプルGraphQLクエリはレポートの末尾に添付した。
Keywords:crvUSD, liquidation risk, health(crvUSD、清算リスク、health)
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